立ち止まる勇気-司法試験・予備試験に確実に合格する勉強法の探究-

このブログは、司法試験受験指導予備校での経験等も踏まえて、筆者が司法試験に上位合格(2桁順位)するに至った勉強法を紹介しつつ、基本書の書評やときには司法試験問題の解説等の司法試験受験に有益な情報を発信し、ひいては少しでも多くの受験生の皆様に役立つ情報をお届けすることを志向するブログです。短期合格も大事ですが、合格の確実性の方が私はより重要だと思っていますので、「確実に」=「一発で」合格する勉強法を共に探り、法学を学ぶことの楽しさを司法試験の勉強からも感じ取っていただければ、望外の喜びです。

【書評】憲法の基本書・その3

 

 

 こんにちは、すしおです。仕事等で更新ができておらずでした><

 今回は憲法の基本書(とはいってもいわゆる「基本書」ではないのですが…)のレビュー第3弾です。前回に引き続き、必携の書籍も出てまいりますし、基本書選びの際の参考になれば、幸いです。

 

11.宍戸常寿「憲法 解釈論の応用と展開〔第2版〕」 

  司法試験 ★★★★☆

  予備試験 ★★★★☆

  基礎学習 ★★★☆☆

  応用学習 ★★★★☆

憲法 解釈論の応用と展開

憲法 解釈論の応用と展開

 

 法学セミナーの連載が書籍化した宍戸先生の単著です。

 司法試験及び予備試験の論文式試験で安定して上位答案を書くレベルまでステップアップするのであれば、本書は必読です!基本的な事項を解きほぐし、深い理解を提供してくれる一冊で、随所に高度な議論も紹介されています(章末に掲載されている参考文献まで読まないと理解が深まらないところもあるので、ラクしたい受験生としては、もう少し参考文献の内容にも踏み込んでほしいのに…とは思いますが、他方で、きちんと文献に当たってほしいという思いもよくわかりますので、悩ましいところかと思います。)。

 予備校等で「最低限の」あるいは「一定程度の」学習を終えている方は、ステップアップのための一冊目として本書に挑戦してもよいと思います予備校で教わった内容で「憲法はバッチリ」ということはまずあり得ないので。)。おそらくはじめは「何が書いてあるかわからない」「どこが重要なのかわからない」ということもあろうかと思いますが(筆者もそうでした…)、くじけずに少なくとも人権分野は読み進めてみることをお勧めします。本書の内容がイマイチ掴めないときは「憲法はまだまだだな…」ということですので、本書と向き合いつつ、理解を深めていきましょう!憲法論文式試験では(本来は問題文に指定されるまでもないことなのですが)反対説にも言及することが求められます。本書では、種々の論点について、いろいろな考え方・視点に言及されており、その点も試験勉強のための教材としてgoodです(念のため敷衍すれば、色々な見解に言及してあるということは、そのどれかを自分が採用したとき、そのほかは必要に応じて答案で言及する反対説になる、ということです。)。

 基本的には優れた良書なのですが、本書の記載は、答案を書くことを必ずしも想定していないので(著者はしているつもりかもしれませんが、そうであれば不十分です。)、本書の記載を理解できたとして、それをどのようにどの程度、司法試験・予備試験の論文式試験に再現するかは悩ましさが残ると思います(まだ案内はしておりませんが、追ってご案内する私の憲法の講座ではこういった悩みもフォローしております)。敷衍すれば、本書を読み進めても直ちに答案のレベルが上がるわけでは必ずしもないことに注意が必要です。憲法について深く理解することと、理解したことを自分の言葉で答案に起こすことは別の能力で、後者は人それぞれとしか言いようがありませんので、後者の能力も日々鍛えていく必要があります。後者の能力は、どの科目でもよいので、基本書等を読んで、それを自作の論証パターンにする、という作業によって鍛えられますし、その論証パターンは試験まで使えますので、一石二鳥ですね^^

 本書を読み進めるときは、別途、自分のまとめノートなどに該当ページとともに控えておくなどしながら学習を進め、答案でどのように表現するかを常に並行して考えるようにするのがよいのではないかと思います。今なお、受験生の多くが手に取る本の一冊だと思いますので、余力のある方や憲法を得意科目にしたい方は必携です。

 

12.駒村圭吾憲法訴訟の現代的転回-憲法的論証を求めて」

  司法試験 ★★★★☆

  予備試験 ★★★★☆

  基礎学習 ★★★★★

  応用学習 ★★★☆☆ 

  こちらも、法学セミナーの連載が書籍化された一冊ですね。私が受験生なら、改版を希望しますが、改版予定も耳にしたことはなく、少し古めの一冊になってしまいましたね(私が学生の頃は新しい本だったのですが…)。憲法の勉強が進んだ学生なら、書籍名にニヤリとしたものを感じるはずです(有名な一冊が想起されますね。)。

 さて、こちらは、個人的には宍戸先生の書籍よりもオススメです。余裕があれば、もちろん両方読んでほしいのですが、そうも言っていられない受験生も少なくないと思いますので、そういった方はこちらを手に取ることをオススメします。

 理由ですが、本書は特に表現の自由や職業の自由、平等原則といった論文式試験において理解を深めておくことが求められる分野について特に重点的に解説されている印象で、受験生の手の届かないところに手が届く記述もたくさんあります(例:内容規制と内容中立規制の分水嶺、堀越事件判決の理解の仕方、薬事法違憲判決が示した判断定式の構造などなど)。

 宍戸先生の本と異なり、教科書風の記述ですので、答案にも落とし込みやすいのがポイントです。予備校で憲法を一通り勉強した方、基本書等で人権分野について一通り学習した方は、ぜひ本書を副読本として、個別の議論について理解を深めていってください!副読本としては、後掲の木村先生の書籍と並んで、大変優れた良書であり(その意味で基礎学習教材としては文句なしの★5です。)、応用的な論点にも平易な(注:人によって個人差があります)表現で解説を加えてくれています。憲法を得意科目にしたい方のみならず、苦手を克服したいといった方にもオススメできる良書です。司法試験の論文式試験の勉強をするうえで、私も本書は何度も読み返したました。一部違憲の判断方法論や文面審査、第三者の権利主張適格など論点の網羅性もしっかりしていますので、受験生必携の一冊であることは間違いないと思います。

 司法試験のようなやや長い答案を書く試験においては、特に理解の浅い答案と深く理解できている答案の差が露骨に出ますので、本書を読み進めながら、自身の理解が甘かったところをブラッシュアップしていってください(おそらく、はじめのうちは、「そういうことだったのか!」という記述が満載だと思います。)。

 

13.木村草太「憲法の急所-権利論を組み立てる〔第2版〕」

  司法試験 ★★★★★

  予備試験 ★★★★★

  基礎学習 ★★★☆☆

  応用学習 ★★☆☆☆ 

憲法の急所──権利論を組み立てる 第2版

憲法の急所──権利論を組み立てる 第2版

  • 作者:木村 草太
  • 発売日: 2017/03/30
  • メディア: 単行本
 

  メディアにもたびたび登場される木村先生の単著ですね。みなさまもご存じのとおり、数年前までは、論文式試験の出題傾向として、具体的な訴訟を前提に、原告(または被告人)と被告(または検察官)の立場から主張・反論を戦わせ、それらを踏まえて私見を述べることが求められる、というものが確立していました。本書は二部構成になっているのですが、第二部は従前の試験傾向を前提とする記述なのですが、その点を加味しても、受験生が手に取る教材としては大変優れた良書だと思います。なお、最近、試験傾向の変化について、採点実感等を形式的にしか読めないことに起因する(言ってみればしょーもない)質問を受けることが多いので、簡単にコメントを。具体的な訴訟を前提とする主張反論型の出題形式と現在の出題形式で、書くべきことは全く変わりません(変わるはずがありません。)。採点実感が警鐘を鳴らすのは、主張・反論という形式に固執したり、違憲筋の見解と合憲筋の見解を紹介して試験で中道的な見解を採用するといった形式に固執することであって、主張と反論という対立構造で学習することや思考することを否定するものではありません。反対の立場に言及してほしい、というメッセージを受験生の多くが「適切に」汲み取れないので、上記の形式のみ守っていれば「反対の立場に言及」したことにはならない、ということを言いたいのです。詳細は、私の講義の中ででも!笑

 さて、書評に戻ります(お会いしたことはありませんが、木村先生、なんかごめんなさい。)。

 本書は二部構成になっていますが、個人的には、第二部(演習編)のみ読んでいただくのがよいと思います。憲法の学習が進んでいる方は第一部もお読みいただくと色々と発見があると思いますが、学習が進まないうちは、学説においても共通理解を得ていると思われる記述と木村先生なりの解釈論との峻別がつかない可能性が高いと思います。残念ながら司法試験の答案に木村説をベースとする論述を書いても点数は伸びにくいと思いますので、その意味で、敢えて第一部は読み飛ばす、という用法がおススメです。

 第二部は、さすが木村先生、と言いたくなるほどに秀逸です。学説と判例がバランスよく参照され、多角的に分析するとはどういうことか、その模範演技の1つを示してくれています。私見ですが、問題演習形式になっていても、自力で解くのは時間の無駄なので(深い理解を伴っていない状態でう~ん、う~んとどれだけ悩んでも、判らないままです。)、さっさと読み進めてしまいましょう。本書を読み進めていけば、特に、審査密度の設定においてどのような対立軸が具体的な事案において生じるのかイメージがもてると思います。現時点の試験傾向からすると法令違憲がほとんど(出うるとして処分違憲でしょうか(その場合は、●●という行政処分をしようと思っているが憲法上問題はないか、と質問された弁護士の立場で答案を書く問題なのかなぁと予想しております。)。)ですので、法令違憲についての記述を中心に読み進めるのがよいかと思います。特に、憲法について理解が浅いうちは発見が多く、他方で、身につくところまではいかない方が多いのではないかと思いますので(すしおもそうでした。)、そういう方は二周しましょう!

 予備試験レベルであれば、本書の水準で答案を書ければまず間違いなく圧倒的上位の答案になると思います(すしおが予備校等で答案の添削をしている経験値からしても…)。教科書テイストではなく、具体的な設例をもとに解説が進んでいく方がよい、という方には特におススメの良書です。

 

14.小山剛ほか編「判例から考える憲法

  司法試験 ★★★★★

  予備試験 ★★★☆☆

  基礎学習 ★★☆☆☆

  応用学習 ★★★☆☆

 

判例から考える憲法

判例から考える憲法

  • 発売日: 2014/05/01
  • メディア: 単行本
 

  こちらは、書名のとおり、判例から考える」訓練をするうえでは、現時点で他の追随を許さない良書です。予備試験の論文式試験の問題は、紙幅と時間の都合上、判例の射程を詳細に論じている余裕などない受験生がほとんどで、主要な学説を参照するだけでも十分説得的な答案が書けますので、予備試験との関係では必読とまでは思いませんが、司法試験との関係では必読です(本書を読まずに「判例がうまく使えません」と質問された場合は、まずこの本を読んでから質問してください、と答えるようにしています。)。

 本書も、具体的な設例をもとに解説が進んでいき、従来型の試験傾向に沿った書籍ですが、その点を考慮しても学ぶことが多い一冊です。受験生目線でいえば、もう少し判例の射程や判例の解釈をめぐる争点について深堀してほしいところも少なくないのですが、あまり高度な記載にしても却ってわかりにくくなるので、その点は敢えて言及を避けているのかな、と善解しています。こちらも、時間を計って解く、といった無駄なことはせず、サクサク読み進める用法をおススメします。本書を読み進めることで、ある程度の類型ごとに、「想起すべき判例」「判例を想起して争点との関連を理解する」というものが分かってくると思います。本書には、(すしお的には)参照可能性がある判例の一部が漏れていたりしますが、それはそれで、それに気づけるかどうか、が勉強の1つと割り切っていました。その意味で、本書で「100%十分」というわけでは必ずしもないのですが、具体的な事案において判例を想起する能力の土台作りのためにぜひ手に取ってほしい一冊です。本書を読む前と後では、司法試験の論文式試験の問題を見た時に想起できる判例の数、内容が全く異なっていると思います(仮にそうならないときは、もう一度読みましょう。)。 

 

15.松本和彦「事例問題から考える憲法

  司法試験 ★★☆☆☆

  予備試験 ★★★☆☆

  基礎学習 ★★☆☆☆

  応用学習 ★★☆☆☆

 

事例問題から考える憲法 (法学教室ライブラリィ)

事例問題から考える憲法 (法学教室ライブラリィ)

  • 作者:松本 和彦
  • 発売日: 2018/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  大阪大学の松本先生の単著です。比較的最近の書籍で、ページ数も少ないので、サラリと読める点はgoodです!

 憲法の理解が進んでいる方は、最後の総括的に読んでみるとよいかと思いますが、憲法がまだまだ苦手、といった方は、本書より先に、上記12.13.14あたりを読む方が格段に効率が良いと思います。本書は記述が薄い分、行間を読めるレベルに達してないと、なんとなくわかった気になるだけ、で終わってしまう方が多いのではないかと思います。すしおも通読してみましたが、本書から学ぶ(ここでは、本書を読まないと得られない、の意)ことはありませんでした(他書から学べることばかりです。)。

 具体的な設例付きでないとなかなか頭に入らない、という方で、13.14.はすでに読み終えて、次に進みたい、という方向け、でしょうか。本書をスラスラと読み解ければ、一定水準の理解度には到達していると思いますので、自身の学習度を測るメルクマールとしても有益な一冊ですが、限られた時間の中で憲法の苦手を克服し、あるいは確実に上位合格答案を書けるようになりたいとお考えの方にとって、必読とまでは言えないと考えています。

 

 本日は、ここまでです!

 もう少しだけ憲法の書籍を紹介したら、行政法民法の勉強法・書評へ進んでいこうと思います!「こんな記事を書いてほしい!」「先にこの科目から扱ってほしい!」などございましたら、ぜひぜひコメントくださいませ!