立ち止まる勇気-司法試験・予備試験に確実に合格する勉強法の探究-

このブログは、司法試験受験指導予備校での経験等も踏まえて、筆者が司法試験に上位合格(2桁順位)するに至った勉強法を紹介しつつ、基本書の書評やときには司法試験問題の解説等の司法試験受験に有益な情報を発信し、ひいては少しでも多くの受験生の皆様に役立つ情報をお届けすることを志向するブログです。短期合格も大事ですが、合格の確実性の方が私はより重要だと思っていますので、「確実に」=「一発で」合格する勉強法を共に探り、法学を学ぶことの楽しさを司法試験の勉強からも感じ取っていただければ、望外の喜びです。

憲法の勉強法・その2(上位答案を書く方法と論文試験における検討の道筋)

 今回は、憲法の勉強法のいわば前提として、どのように論文試験の問題にアプローチするのが「高得点への」近道かを書いてみます。どのような答案に高得点がつくのか、をイメージできていないと、勉強法の方向性も定まり得ないですよね。もちろん、私個人が試験の採点基準など知る由もないのですが、少なくとも、今日においてなお、受験生の9割以上が憲法という科目については「高得点への」道を模索することを諦め、「一定の水準の」答案を書くことに終始しているようです。

 したがって、特に憲法という科目については、「高得点を目指して」答案を書くことが、他の受験生に差をつける意味で、特に重要です。

 また、答練や模試の問題・解説を見ている限り、新司法試験になって10年以上経過した今日においてさえ、予備校(特に自らを「一流」と誤信している講師陣)も、自ら問題を作成しておきながら、当該事案との関係で重要な最高裁判例の射程を検討することも、有力な学説等を踏まえて説得的な論述を経て審査密度を定めることも全くできていません。(自ら問題を作成しておきながら、失笑ものです……)。司法試験の過去問解説講義等もありますが、判例を踏まえたアプローチに成功しているものは見たことがありません。

 やや話が逸れましたが、ここで確認しておきたいことは、当該事案(皆様が受験される際の論文式試験の問題)との関係で、きちんと判例の射程を検討し(後述しますが、どういう文脈で、なぜ判例の射程を検討するのか、を理解することが大事です。)、説得的な論述を経て審査密度を定めることさえできれば、それだけで、予備校の指導を妄信し、予備校が作成する模範答案を字義どおり「模範」だと思っている受験生集団よりも相対的に上位の答案になります。

 現時点でも、最高裁判例の射程や有力な学説を踏まえた答案を書ける受験生はかなり少ないと思われます。なぜなら、市販されている再現答案の中で公法系上位に位置する答案のほとんどが最高裁判例の射程の検討を経ていないためです(ただし、説得的な論述を経て審査密度を定めるものはそれなりに存在します。)。その結果、判例の射程を踏まえ、かつ、説得的な論述を経て審査密度を定めるところまで到達すれば、まず間違いなく(相対的な)上位答案になります

 もちろん、当てずっぽうでこのように考えているわけではありません。これまで採点実感等で、繰り返し、判例を踏まえて検討することが求められていることは司法試験委員サイドから明示されていましたし、近年は、問題文にそれが明記されるようにさえなりましたから、判例(司法試験では最高裁判例のみ検討すれば十分で、先例性のない下級審裁判例はまずは学習の対象外として問題ありません。)を踏まえた答案を書くことが最低限求められるはずです。それにもかかわらず、上記のとおり、それすらできない受験生がほとんどなのですから、それ(判例を踏まえた答案を書くこと)さえできれば上位答案になるのは当然ですね。現に、私も、公法系は2桁(憲法は自称1桁…)ですが、判例を踏まえた論述に1頁以上を割きました。

 というわけで、長くなりましたが、勉強法の方向性を定める上で、判例を踏まえて答案を書けるようになることが中核を占めそうであることは確認できました。あとはその方法ですが、それは一様ではないでしょう。「憲法の勉強法・その1」で記載したとおり、追って、自作教材を用いた講義あるいは勉強会等を提案できればとは思いますが、いずれにしても、この記事を読んでいただいた皆様におかれましては、自分の勉強法の方向性が正しいか、今一度見直して頂くのがよいかと思います。

 また、その次に重要なのが、(一定程度権威のある)学説の理解です。例えば、内容規制vs内容中立規制という対立軸がありますが、㋐これは一体何に関する対立なのか、㋑内容規制と内容中立規制はどのように分けるのか(まさか、「内容に着目した規制か否か」だとは思っていませんよね?それでは水掛け論になるだけです。)、㋒内容中立規制であれば本当に審査密度は厳格化しないのか、などの問いに、皆さんは自分の言葉で答えられるでしょうか。仮に答えられないとすれば、司法試験の問題で内容規制の疑義がある事案が出ても、その点について何ら説得的な答案を書く準備ができていないということです(言い方は厳しいですが「勉強不足」です。)。

 またしても、抽象的かつ雑駁なのですが、まとめると、結局、

 ①判例を踏まえた答案を書けるようになること(そのためには何が必要か、まずは考えてみることが重要です。)

 ②重要な学説について理解し、自分の言葉で説明できるようになること

 を目指さなければなりません。私のこの理解が正しければ(と書きながら、私は正しいと確信していますが(笑))、予備校本をいくら読んでも全く憲法の答案のクオリティは上がりませんし、芦部先生の『憲法』1冊でも到底無理なことは分かりますよね?

 私は受験生時代、20冊以上の基本書・演習書は手元において学習していましたが、本来はこれくらい必要だと思います。もっとも、読んでみたけど「これは要らないな…」というものもありましたので、書評の際にその点は明記するようにしようと思います。私が作成した教材は論文や最高裁判例解説まで当然網羅していますので、またしても乞うご期待。

 この記事がみなさまの勉強法を見直す契機となれば幸いです。長くなってしまいましたが徐々に具体化していこうと思いますので、お付き合いいただければ嬉しいです。